第132回(最終回) 六甲山発郷土誌づくりの歩み 【内容】●六甲山を活用する会の15年 ●六甲山発郷土誌づくり ●六甲山発郷土誌を普及する 【日 時】 平成29年10月21日(土) 午前10時~午後3時30分 【場 所】10~12時:近隣の自然散策 13~15時:六甲山自然保護センター 【募集人員】 30名 【昼 食】 各自弁当をご持参ください 【参 加 費】1,000円(資料・報告費として) 六甲山自然保護センターの施設を活用し、六甲山への関心を高 める目的で「六甲山魅力再発見市民セミナー」を着想し、15年 にわたって定例開催しています。「市民セミナー」から、周辺地 域の散歩道づくりや森づくりへも活動が発展しました、 3年ごとに『六甲山物語』を発刊し、六甲山を丸ごと知るため の情報やノウハウを蓄積し、「六甲山発郷土誌づくり」といえる ものになりました。今後は一般市民への普及に力を入れます。 ご愛顧いただいた市民セミナーは第132回で終了します。15 年の試行錯誤の試みでしたが、講師・参加者・関係者などのご支援 のおかげで、みんなで築き上げた成果だと思います。この活動の数々 のエピソードをご紹介し、今後の展開を図る上で、ご意見やお知恵も拝借できれば幸いです。(事務局)
開催日時2017年10月21日(土)10時~15時30分
会場六甲山自然保護センター
講師堂馬 英二
詳細 チラシPDF 報告書抜粋PDF

市民セミナー報告書より

15年続いた「六甲山魅力再発見背移民セミナー」は今回の第132回をもって終了することになりました。台風21号が接近して雨天の中を42名の方が参加されました。午前中も24名方が雨の中を自然散策されました。

①午前中の自然散策に25名が参加しました。雨具を着けて出発です。

②駐車場に下りる階段は滑りやすいので足元に注意です。

③シュラインロードで石仏に参拝

④前が辻で六甲山開発の歴史を辿りました。

⑤六甲山ホテル旧館を観て、記念碑台に戻りました。

⑥午後からは、自然保護センターのレクチャールームで「第132回市民セミナー」の開始です。

⑦今回の司会は岡敏明さん

⑧講師は堂馬英二さん

⑨最終回を記念して、展示ルームで参加者の記念写真

第132回テーマ 六甲山発郷土誌づくりの歩み
●六甲山を活用する会の15年
●六甲山発郷土誌づくり
●六甲山発郷土誌を普及する
実施日:平成29年10月21日(土)午前10時~ 15時00分
場 所:六甲山自然保護センター、記念碑台・散歩道

講師:堂馬 英二さんプロフィール
1947 年生まれ、灘区在住。1970 年静岡大学ヒマラヤ遠征隊に参加。71 年農学部卒業、民間企業勤務を経て、75 年ヒマラヤ技術協力会事務局長。76 年から(株)リクルート専属教育トレーナー、91 年(株)ワークスタイル研究所を設立。阪神大震災以降、六甲山の活性化に関わり、2003 年六甲山を活用する会を設立。

第132回市民セミナーの講演内容

台風前日、雨中の散策に24名が参加
台風21号が接近中の雨天で14℃、静岡大学山岳会一行11名など24名が、雨具を着けて午前中の自然散策をしました。まちっ子の森や、森と歴史の散歩道を探勝して、当会の環境活動を知っていただきました。午後のセミナーは最終回ということで久し振りに参加される方も多く、42名もの盛況で、ざっくばらんな雰囲気で賑わいました。
阪神大震災から地域に目を向けて20年                                             講師は阪神大震災後から六甲山に関心を向けて活動を続けています。20年近く保管していた冊子を数点、参加者に寄贈しました。震災3年後にコープこうべが発行した『いまここにある明日』で、「こうべ」らしさってなんだろうと題し、ハイカラ生活の追求からオリジナルな生活の創造を提起しました。
1999年から3回開催した六甲山上でのプチ・シンポジウムの報告書は、市民として初めて六甲山に目を向けた試みとして注目を集めまし。これらが地域を知ろうとする原点になり、「市民セミナー」の運営や報告書の継続・発信につながっています。
「市民セミナー」から「郷土誌」の発信へ
講演は岡さんの司会で進みました。まず「六甲山を活用する会」15年の概要です。会の趣旨や運営体制、活動地域、そして「市民セミナー」を軸にして派生した環境整備や環境学習など、六甲山上での活動は広がっています。主題の「六甲山発郷土誌づくり」の冒頭で、地域を知る試
みを始めた出発点を述べました。2000年前後に神戸地域ビジョン委員会で県民行動プログラムの策定に関わっており、これが2003年の市民団体の設立につながりました。
リニューアルした兵庫県立六甲山自然保護センターの活用に取り組み、六甲山上で半日滞在する方策としたのが「六甲山魅力再発見市民セミナー」です。初年度は関係者を講師にして6ヶ月の予定を立てただけでスタートしました。毎月第3土曜日、参加費500円、講師とテーマは一回限り、当月報告書発行、3年後に『六甲山物語』を出版すると掲げて、綱渡りに近い状態でした。講師探しや集客などで苦労しましたが、やがて多彩な講師が出講され、多岐にわたるテーマを集めて、4年目には『六甲山物語1』を発刊しました。活動が軌道に乗り、『六甲山物語2・3・4』や『六甲山辞典・総集編』CD-R版も発刊し、六甲山情報を集積しました。9年目に100回を迎え、「市民セミナー」の終了を考え出した時、「六甲山発郷土誌」という言葉に出会いました。活動の意義を改めて認識し、さらに6年継続しました。15年目の現在、『六甲山物語5』の発刊を機に、「市民セミナー」を継続するのは負担が大きいので、終了することにしました。蓄積した六甲山情報やノウハウを広める方向に転換します。まず、「市民セミナー」全132話を再整理し、4つのジャンルの「六甲山発郷土誌」マップを作成しました。
市民が地域を知るためのフレームができたので、運営ノウハウや活用方法も加え、ネットで発信する準備を始めました。
六甲山を知る「手がかり」を広めたい
六甲山を広く深く知ろうとする「市民セミナー」の継続が、活用可能な産物を生じました。出席者は132回という運営や報告書の発行に感嘆されました。これからの正念場は、多様な講師の貴重な語りを生かし、多くの市民が地域を知り関心を高める「手がかり」として活用してもらうことです。また、新たなチャレンジを続けるという予感もしています。

参加の感想 山端謙一郎さん

六甲山を活用する会を立ち上げて15年、市民セミナーを132回、報告書を毎回発行されていた事、すごい経験をされていたんだと感心させられました。世の中では継続は力なりと申しますがそれを実践されていた!参加者の募集、講師の依頼等のノウハウも蓄積されていると思います。私ども静岡大学山岳会関西支部として六甲山を楽しむ事ができました。会の皆様ありがとうございました。又会の隆盛を祈念致します。

詳しくは2ページをお読みください。

講演のあいさつ(堂馬 英二さん)
ふだんは黒子として「市民セミナー」運営のお世話をしています。最終回は仕掛け人が責任を取れと言われて、講演を引き受けました。「市民セミナー」の背景や経緯をご説明して、「郷土誌」の広報についてのご意見をおうかがいしたいと思います。

1.六甲山を活用する会の15年
「六甲山を活用する会」は六甲山上で長く活動する市民団体です。「市民セミナー」を発端に、環境整備や環境学習などにも取り組んでいる。
■「六甲山を活用する会」の今
●会の概要:平成13年9月設立、現在の会員は90名。趣旨は、記念碑台周辺の利用、自然保護センターの活用、「まちっ子の森づくり」と「森と歴史の散歩道」の普及を挙げている。
●会のやりくり:ここ5年間では事業費は438万円から227万円の幅がある。7割前後は助成金で賄っているが事務局運営費などのやりくりで苦労している。
●活動地域:六甲山中央部の記念碑台周辺の2km圏で、自然保護センターを拠点に、まちっ子の森や近畿自然歩道で毎月3~5日活動している。
■活動内容
●市民セミナーと郷土誌:2003年4月に第1回市民セミナーを開始し、2011年までは毎月、2012年から年4回の開催で、15年目の現在132回を迎える。毎回報告書を発行し、3年毎に『六甲山物語』を発刊。「六甲山辞典・総集編」CD-R版も発刊し、郷土誌といえる資料を蓄積している。
●森と歴史の散歩道づくり:2006年から、近畿自然歩道の清掃・整備に取り組み、延長1kmでササ刈りや山道整備を継続している。2.5kmの周回路を「森と歴史の散歩道」と名づけて整備し、案内もしている。
●まちっ子の森での環境学習:四季の環境学習として、年4~5回、まちっ子の森の二つ池などで、「小さな場所でも目を凝らせば多様な世界が見えてくる」をモットーに、学童対象の環境学習を運営している。
●アセビ伐採調査:2009年からまちっ子の森1.2haで、落葉広葉樹主体の森に再生を目指すアセビ伐採調査を4期実施した。フォロー調査を継続し、人と自然の博物館の研究紀要『人と自然』に学術論文も掲載している。

2.六甲山発郷土誌づくり
原点を振り返ると、阪神大震災で地域の生活文化が壊滅したと感じて、六甲山との共生に関心を向けた。20年前に作成し保管していた冊子を死蔵しないために配付したい。これらを参照し、「郷土誌」の前史に触れる。
■地域を知る試み
●「こうべらしさ」を考える:震災3年後、体験が風化するのを心配して、コープこうべが記念冊子を発刊した。編集協力した私も「こうべ」らしさってなんだろう、をテーマに文章を載せた。神戸の特色を思案して、「ハイカラ生活の追及からオリジナルな生活の創造」を提起し、六甲山の自然環境との共生を考えた。
●六甲山に目を向ける:生涯学習団体「21世紀学学会」の有志で、1999年に六甲山上でプチ・シンポジウム「改めて六甲山に目を向けてみよう」を開催し、報告書も発行した。マスコミに注目され脚光を浴びた。3年で3回続けて、市民が集まり六甲山のことを話す交流と、多様な報告や提案を集めることができた。
●市民団体を立ち上げる:兵庫県が神戸県民局を設立し、公募された地域ビジョン委員会に六甲山部会のリーダーとして参画した。4年かけて六甲山を生かす「県民行動プログラム」を作成し、それを実践しようとした勝手連が市民団体を設立した。
■「六甲山魅力再発見市民セミナー」の試み
●「市民セミナー」の着想:兵庫県の唯一の施設である「六甲山自然保護センター」がリニューアルし、施設の有効利用が課題になった。山上に半日滞在する集客として「六甲山魅力再発見市民セミナー」を着想した。毎月第3土曜日、参加費500円、講師とテーマは一回限り、当月報告書発行を基本にした。第1回は18名が参加したが、貴重な話を神戸市民150万人に伝えたいので、3年後に『六甲山物語』を出版すると宣言した。綱渡りの「市民セミナー」が始動した。
●報告書の発行:参加者募集チラシや報告書の基本デザインと様式を最初に決めた。各回の報告書はA4×4ページで、表紙はセミナーの概要、講演内容の要約が2ページ、裏表紙は会報とした。開催時、写真・VTR、メモ、IC記録を行った。若手がブラインドタッチで記録を作成してくれ、編集作業が軽減された。
●『六甲山物語1』出版: 報告書は当月作成して郵送し、年度毎に「六甲山魅力再発見ガイド」を発行した。3年分の報告書36話を再編集し『六甲山物語1』を発刊した。講師とテーマは一期一会で幅広くランダムに集めたため、再編集する際に、目次立てで苦労した。テーマを6つのジャンルに集約できたのが大きな成果で、座標軸も得られた。

辞典として使えるように437の用語索引も作リ、井戸知事に巻頭言をお願いし、初版1千冊を出版した。
『六甲山物語1』目次
1.六甲山を見渡す~六甲山の成り立ちと都市環境
2.六甲山を辿る~六甲山の歴史と文化
3.六甲山の植物を知る~六甲山の生物
4.六甲山の動物を知る~六甲山の生物
5.六甲山のくらし・学び~生活文化と環境学習
6.六甲山に親しむ~スポーツからレジャーまで

■「市民セミナー」運営のエピソード
●月次開催から4回開催へ:月例開催を9年続け、2011年から4・6・8・10月の4回開催に変更し、午前中は自然散策、午後は講演の組み合わせにした。
●参加者は定員の9割:「10名を割ったらセミナーは廃止する」と気を引き締めて集客した。最少14名で最多は57名、132回平均で26.7名になった。
●「郷土誌」を自覚:2010年に北海道新聞の記者と話した際、「市民セミナー」に対するコメントを求めると、「大都市における郷土誌づくり」だと示唆された。「六甲山発郷土誌」という意義に目覚めた。
■「六甲山郷土誌づくり」のノウハウ
●講師依頼:2回出講されたのが6名、市民活動家からオーソリティまで合計126名で、人と自然の博物館の研究者をはじめ学識経験者も多い。人物、活動内容、テーマという3つの魅力を確認してお願いしている。
●『六甲山物語』シリーズ:3年毎に『六甲山物語2、3、4』を刊行し、『六甲山辞典・総集編』CD-Rも発刊した。『六甲山物語5』の出版を目指している。
●運営の工夫:神戸シルバーカレッジのぴかぴか隊に年間行事として団体参加してもらい参加者を確保している。年4回の開催にすることで運営の負荷を軽減した。郷土誌としての内容を充実するために、六甲山の特性を探るテーマを増やしている。

3.六甲山発郷土誌を普及する
■「六甲山郷土誌マップ」を作った
●132話が4つのジャンル:『六甲山物語1~5』をまとめて検索できる試みをした。「六甲山の特色」4項36話、「六甲山の歴史」3項29話、「六甲山の生きもの」3項32話、「六甲山とくらし」5項35話に整理でき、郷土誌の全体像が簡明になった。

●マップの活用マニュアル化:利用者向けの案内書や、検索の仕組みを整備する。郷土誌の目指すところや、有効な使い方を小冊子で案内し、報告書の内容はCD-Rや、ネットで検索するという形を考える。
■「六甲山発郷土誌」を普及したい
●web.で情報発信:「六甲山発郷土誌」は専用のホームページを制作して無料で公開することを基本に検討している。情報公開について講師の承諾を求めると、主旨に賛同し激励される方が圧倒的に多かった。
●運営ノウハウの広報:「市民セミナー」の運営や、「郷土誌」の制作などもノウハウ化して、「六甲山発郷土誌づくり」として、全国に紹介したい。

質疑応答・感想(敬称略)
*田中:これだけきちっと報告書を作るのは真似できない。原動力はどこにあるの?~私は編集者の立場、講師の話
を誰かに伝えたいという心がけかな。
*愛徳(なるえ):人集めのノウハウは?~何とか集まっている。リピートは難しいが口コミやグループ参加が有効。132回の市民セミナーを凝縮した形にすると日本全国でもできそうだ。~全国の地域史とか郷土誌、地域起こしで活動する人にも伝えたい。
*三木:ライフスタイルの創造に貢献したか?~難しい質問だ。行きがかりでやっている、役に立つのとオリジナリティの2本柱を求めている。
*藤原:ふつうは地域の中の六甲山という見方だが、六甲山という立場から逆に地域を見ているのに感心。
*前田:『六甲山物語』の資料を六甲山の百科事典のように使っている貴重な財産。ウェブでの無料公開で素晴らしい財産を使えるようにしたい。
*中井:セミナーはこれで最後かもしれませんが、「六甲山発郷土誌」だけでなく、132回の情報・経験を活かして、次の新しい事に挑戦してもらいたい。

事務局
台風前の雨天にもかかわらず、42名もの方が参加されて、最終回が盛り上がりました。これまで実に多くの方のご協力で132回の市民セミナーを完遂できました。15年で培ったものを多くの方に広めるという次の課題は相当手強いですが、リ・スタートします。

◆参加者の声:
・市民セミナーに出講したのが活動の原点になっています。
・六甲山発郷土誌は残していくべき大切な資料です。
・年に一度くらいは「市民セミナー」を開催してください。
◆参加者:42名(50音順・敬称略)、ゴシック:静大山岳会
天野征一郎 伊谷 正弘 井上 幸雄 大上 卓男 岡 敏明 岡谷恒雄・園子 金原 淳一 神谷 知彌 川部 忠夫 喜多 茂 北嶋 治夫 木下 健二 熊谷 正一 黒田 郁子 小谷 寛和 沢村 勝義 下田 ゆみ子 高橋 明子 高橋 貞美 田中正視・敬子 田中 弘子 玉井 誠 堂馬 英二 徳見 健一 中井 龍司 中尾啓子 中務 勝子 愛徳 篤・ 陽子 福永 一登 藤原 義則 前田康男 眞苅 保 松岡 達郎 三木 柚香 八木 浄 柳田千惠子山端謙一郎・和子 米田 佐江子

◆参考・配布資料など
・PPT:「六甲山発郷土誌づくりの歩み」
・配付資料:「六甲山発郷土誌」マップ。『こうべからのメッセージ2』、『プチ・シンポジウム報告書』1・2・3。記事掲載紙/毎日新聞、神戸新聞。
・参考資料:『六甲山物語1・2・3・4』、他 。

堂馬 英二:どうま えいじ
六甲山を活用する会 代表幹事
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