市民セミナー報告書より
六甲山上の静かな山荘を訪ねた
朝から雲ひとつない秋晴れの一日となりました。今回は、国の有形文化財に登録されることが決まったばかりのヴォーリズ六甲山荘に会場を移して、20名の参加者で開催しました。講演の終盤に、講師の清水さんから山荘の内部や外部のヴォーリズ設計の特長を説明していただき、山荘の半日をゆっくり楽しみました。
筋の通ったロマンティストの清水さん
清水さんは、昭和40年から平成にかけて実業の世界に身を置かれていました。戦後、日本が物質の豊かさを得たことと引き換えに失ってきたものの大切さを見直すことに関心を注がれました。
失ったものをなんとか守ることできないかと、2000年に特定非営利活動法人アメニティ2000協会を設立され、理事長に就任されました。創立時17名だった会員は現在380名となり、着々と活動基盤を築いておられます。
2002年4月から阪神間に残る戦前の建築物の実態調査を開始し、3年間で400件の存在を確認しました。
その中から御影住吉山手の旧乾邸と、今回のヴォーリズ六甲山荘の保存活動を決めました。
建築物のナショナルトラスト運動
アメニティ2000協会は広く募金を集め、その基金で歴史環境を保存し、管理・運営する英国ナショナルトラスト運動の考え方を柱としています。建物を対象としたナショナルトラストとしては、日本で最初の事例とのことです。
「しかるべきものが、しかるべきところにある」状態を保存することを強調されました。この活動を多くのボランティアが支えているのが英国ナショナルトラスト運動の特徴です。しかし日本ではまだそこまでボランティア活動が根づいていません。さらに行政の考え方、ひいては国民性も英国とは開きがあると、清水さんは取り組んでいる課題の困難さも述懐されました。
当会の会員も300名にしたい
清水さんは、理路整然とした信念が伝わる講演をされ、参加者が感銘を受けました。ヴォーリズ六甲山荘を保存することにも「一人ひとりの志を募る」ことが380名の会員の方々に共感されたのだと思いました。
当会の活動期間は同じでも、会員数が半分にも達しません。われわれも共感者を募って会員数を300名にしたいと、大きな刺激をいただきました。