市民セミナー報告書より
六甲山には春の兆し
2月も下旬のセミナー当日の朝、六甲山は雨上がりの曇り空でした。記念碑台の散策路では、二つ池に薄氷が張り-3℃でした。日当たりの良いところは温かく、アセビの花芽がつきはじめており、春が近づいているのを感じました。
六甲山研究を担う若手研究者
今回の市民セミナーは、兵庫県立人と自然の博物館・研究員の橋本佳延さんにお願いしました。橋本さんは大学時代に六甲山でコナラの植生を調査されています。このたびは東お多福山のススキ草原の植生復活実験に取り組まれ、六甲山研究を担っていく若手研究者として期待を集めておられます。
セミナーには100枚近くのスライドと配布資料をご用意いただきました。綿密な調査研究にもとづいたデータと、豊富で美しい草原生植物の写真を使い、草原の利用から植生復元実験にわたって、詳しく解説していただきました。
東お多福山で植生復活への取り組み
県立人と自然の博物館と市民団体が共同で、東お多福山のススキ草原の復活に向けて、2007年秋から3年計画で植生復元実験に取り組んでいます。東お多福山は六甲山の南東部に位置し、芦屋市と神戸市の境界上に広がる都市近郊の草原です。面積は1976年には約36ha、2008年は約9haで、4分の1に減少しています。
07年秋から東お多福山の一部、500平方メートルでネザサを刈り取りネザサの落葉をかき取って、刈り取り後の植生を調査しています。刈り取りと落葉かきによって土中の草原生植物の種子の発芽を期待しています。刈り取り後1年で、わずかに残っていた植物が生長し、花が咲いた植物も確認できました。植物種類は約1.5倍、ネザサ以外の草原生植物の葉の量は約6倍になりました。橋本さんたちが進めている植生復活実験には徐々に手ごたえもみえはじめており、今後5年程度は管理を続けていく必要を感じているとのことです。
六甲山で植生の多様性を復活したい
一見緑で覆われている六甲山ですが、植生の多様性が失われています。「東お多福山の草原は病んでいる」と、植生の多様性を復活するために、意欲的な試みを進めておられます。当会でも「二つ池エリア」の環境創成に注力をしていくつもりです。