参加申し込み

市民セミナー報告書より

日照り続きに慈雨が降った

 午前中の自然体験に16名が参加し、まちっ子の森と道端にコアジサイが満開の散歩道を歩きました。この1ヶ月は雨が降らず、翌日に予定している二つ池でのモリアオガエルの観察会がどうなるのか心配でした。午後からの市民セミナーで屋根を打つ雨の音が大きくなりました。抑えられていたモリアオガエル産卵活動が活発になるので、安心しました。

ボーイスカウト50年の長さん

講師の長さんは子どものころからボーイスカウトで、続けるために教員になったとのこと。平成元年2月の昭和天皇の大喪の礼にはボーイスカウトの兵庫県代表として参列され
ました。現在も、ボーイスカウトの要職を歴任されています。

 講演では礼儀正しく、「よりよい社会人」のモデルのような印象です。ボーイスカウトグッズの数々を披露され、100年以上の歴史や教育理念などをお話しいただきました。

ボーイスカウトはアウトドアの本家本元

 1908年にイギリスで始まったボーイスカウト運動は、現在世界116か国が世界機構に加盟し、3,000万人が登録されている。日本が属すアジア太平洋地域は1,600万人、大きなスケールの組織など、概要から説明された。

 創始者のベーデン-パウエル(B-P)氏の数々のエピソードや、ボーイスカウトの野外活動による青少年教育と、背景にある精神について、写真を交えて次々と語られた。

 1907年のブラウンシー島での実験キャンプが発端で、翌年出版した『スカウティング・フォア・ボーイズ』がベストセラーになり、イギリス中でボーイスカウトが組織化された。

 1910年にアメリカで組織化され、日本でも1920年代初めに組織化されている。

 小学校6年生から中学校3年生を対象にした「ボーイスカウト」から、上下に年齢層が広がって、ビーバースカウト、カブスカウト、ベンチャースカウト、ローバースカウ
トの5部門になっている。

 野外でのハイキングやキャンプ活動を手段として、「青少年自らが考え、そして判断できる、そして行動できる人となる」ことを目指し、「ちかい」や「おきて」などの精神も浸透させている。「来た時よりも美しく、残すものは感謝のみ」や「自然は祖先からの遺産ではない。子孫からの借り物である」という言葉はまさに至言といえます。

野外の体験学習の原点を学んだ

 ボーイスカウトの名前はよく知っていますが、今回ボーイスカウト運動の原点や発展の経緯、そして野外教育の理念や精神などをご紹介いただきました。アウトドアの本家本元だと自負されるだけあって、多くの示唆を与えていただきました。野外活動で健全な青少年を育成するという課題を改めて考えました。

講演の内容

講演の挨拶(長 ハ洲翁さん)

 六甲山は活動と教育の場です。ボーイスカウトの活動を知っていただいて、六甲山でボーイスカウトの子どもに会われる時に、どんな教育を受けているのかをわかっていただけたらと思います。

1.現在のボーイスカウト活動の概要

■六甲山は活動の場、教育の場

 所属はボーイスカウトの尼崎7団で、50年前からやっている。六甲山系に親しんでいるが、最近は勝手にキャンプができなくなっている。

 ボーイスカウトは、30年前に「六甲山を緑にする会」から植林の協力を依頼され、登山口で木の苗を配るなど、六甲山を緑にする奉仕をさせていただいている。昨年11月に阪神北地区で六甲全山縦走大会を催した。約52キロを年長者と年少者が励まし合い完走した。六甲山は活動の場になっている。

■ボーイスカウトの創始者と制服

 ボーイスカウトをつくった方は、ベーデン-パウエル(B-Pと略す)です。

私も制服に衣装替えしましたが、カーキ色で左胸に記章が付いている。世界的にも色やデザインが少し違っても、ネッカチーフをしているのが共通している。昔はハットだったが、野外活動に向かないので現在はベレー帽を使っている。

■世界の組織と活動

 世界中に3,000万人、一番多いのはアジア太平洋地域で1,600万人のボーイスカウトがい
る。スカウト活動のないのは、アンゴラ、中国、キューバ、北朝鮮、ラオス、ミャンマーの6か国で、
116か国が世界スカウト機構に加盟し、事務局はジュネーブにおかれている。世界を6つの地域に分け、日本はアジア太平洋地域に属している。

 3年に1度の世界スカウト会議、1年に1度以上の世界スカウト委員会、4年に1度の世界ジャンボリーが開催される。

■日本のボーイスカウト

 2015年には山口県のきらら浜で第23回世界ジャンボリーが開催される。日本のボーイスカウト人口は、今年の3月31日で134,138人、兵庫県内では7,755人いる。多い時から半減している。

■5つの部門

年齢的に5つに分けて「夢と冒険心を満たすプログラム」を盛り込んで一貫教育している。

  • 【ビーバースカウト】幼稚園年長から小学校3年生までの児童で、活動は戸外を中心とした集団での遊び。
  • 【カブスカウト】小学校3~5年生で、戸外を中心としたしつけと訓練。小さなグループでの活動を通じて、社会人としての基本を身につける。
  • 【ボーイスカウト】小学校6年生から中学3年生、もともとはこの年代の少年達から始まった。野外を中心とした体験学習で、ハイキングやキャンプを行う。自主運営のグループの一員として、自らの判断と行動により、社会人としての資質の向上を図るのがねらい。
  • 【ベンチャースカウト】高校生年代の少年、自発活動、自己目標で、プロジェクトを成し遂げて、達成した喜びや満足感を得るのがねらい。
  • 【ローバースカウト】18歳以上25歳までの大学生年代で、指導者・準指導者として高度な野外活動に取り組み、地域での奉仕活動で貢献する。自己開発とルックワイド(広く世界を見よう)をねらいにする。
  • ■スカウト章

     日本のマークは真ん中に鏡があり、ユリの花弁3つを束ねている。棒は人生の進むべき方向を指すコンパス。2つの星は観察と推理の眼、束ねたベルトは友情を意味している。帯には「そなえよつねに」というモットーが書かれている。
    ロープの結び目は「日々の善行」を意味している。

     世界のスカウトマークは、ユリの花弁が3つ、友情の意味で束ねている。そして観察の眼とコンパスがある。

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    2.ボーイスカウト活動誕生の経緯と歴史

    ■スカウト運動の創設

     スカウト運動の創始者ベーデン-パウエルは1857年(安政4年)にイギリスで生まれ、19歳で
    陸軍士官として海外に駐屯した。斥候術の本を書いて陸軍中将で退役した。斥候術の本は青少年に読まれてベストセラーになった。イギリスに帰国すると国が荒れて不良少年が目立っていた。これを非常に心配したことからボーイスカウト運動が生まれた。

    ■ブラウンシー島の教育キャンプ

     1907年にブラウンシー島で、20名の少年達と共に8日間の実験キャンプを行った。その結果をもとに『スカウティング・フォア・ボーイズ』を出版した。それを読んだ少年達が自分たちでボーイスカウトごっこを始め、1908年には、イギリスでボーイスカウトが組織された。

    ■アメリカでの組織化

     アメリカの出版業者ボイス氏がロンドンで道に迷った時に、ボーイスカウトの少年から善行を受けて感動した。この「アンノーンスカウト」のエピソードと、ボーイスカウトの活動を紹介したことから、1910年にアメリカで組織化に発展した。

    ■B-Pが受けた3つの感銘

     B-Pがボーイスカウトをつくる時に3つの感銘を受けたといわれている。

    【ペスタロッチ】教育者で、「すべては他人のために、彼自身は何ものもとらず」という言葉。

    【マリア・モンテッソーリ】幼児教育で有名な医者で縦割り教育を始めた。異年齢の子どもたちの集団で影響し会うという考え方を採り入れた。

    【日本の茶道】千利休などいろんな教えがある。精神と行動を備えて茶道の中に生きている。

    ■日本での組織化

     B-Pは1911年に、英国王ジョージ5世の戴冠式で、乃木希典と東郷平八郎に会っている。1912年にはアメリカ経由で日本を訪問した。1913には少年団が発足した。1921年に皇太子が英国エジンバラでボーイスカウトをご親閲されてつぶやかれた一言が、組織化に発展するきっかけとも言われる。

    3.ボーイスカウト運動がめざすもの

    ■ボーイスカウト運動のねらい

     「社会から信頼されるよりよき社会人の育成」と「自分で考え、自分で判断し、自分で実行し、自分で評価する」、そして「人格を高める健康づくり、技能の獲得、奉仕の実践」になることを目指している。

    ■3つの「ちかい」

     「神(仏)と国に誠を尽くし、おきてを守ります。いつも他の人々を助けます。からだを強くし、心
    をすこやかに、徳を養います」という3条を誓っている。そして、「スカウトは誠実である」など、8つの「おきて」を実践している。

    ■スカウト運動を支える組織

     班・組が集まって自治を支える1つの隊ができる、5つの隊が集まって団ができている。団が集まって地区になり、兵庫連盟は10地区が集まっている。それをまとめているのが日本連盟。そして、アジア太平洋地域、世界スカウト機構となっている。

    まとめ(長さん)

     教師になって学校教育の中で応用できたことがある。ボーイスカウトの眼で見て、一人ひと
    りに温かい目を注ぐことが必要だと思う。

    事務局より

     アウトドアの本家の100年以上も続く活動に触れることができた。野外の体験活動は「全人教育だ」という感を強めることができた。